カスピ海ヨーグルトとは
カスピ海ヨーグルトは京都大学名誉教授・医学博士の家森幸男教授が、1986年、疫学研究の際に「カスピ海」と「黒海」に挟まれた長寿地域として知られている「コーカサス地方」から栄養分析のために持ち帰ったことが始まりと言われています。
家森教授は長寿の調査をするうちに、コーカサス地方には高血圧の高齢者が多いのに重篤な疾患の人が少ない点に興味を持ちました。
そしてこの地方の健康的な食生活の中で特に大量に飲まれていたヨーグルトに着目し、分析のため持ち帰ったのです。
家森教授がヨーグルトを採取した所にちなんで「カスピ海ヨーグルト」と自然に呼ばれるようになったようです。
通常の乳酸菌とは異なって20℃から30℃という低い温度で増えるため、特殊な器具などを使わずに、牛乳から手軽に作りやすいことと、一般的なヨーグルトに比べて酸味がおだやかなことが人気となった理由といわれています。
カスピ海ヨーグルトを作る乳酸菌はクレモリス菌FC株(Lactococcus lactis subsp. Cremoris)といい、他のヨーグルトに存在することはありません。
クレモリス菌FC株は酸素があまり得意でなく、自分が作った乳酸でさえ多くなりすぎると酸に負けて死んでしまうというとてもデリケートな乳酸菌です。
クレモリス菌FC株はとても素晴らしい能力を持っています。
「カスピ海ヨーグルト」のあの不思議な粘りの素となっているEPSを作れることです。
EPSはExopolysaccharide(エキソポリサッカライド)の略で、高分子の多糖です。
クレモリス菌FC株のEPSはヒトの消化液で分解されないことが確認されており、クレモリス菌FC株とEPSはどちらも大腸まで届いて働くと考えられています。
クレモリス菌FC株は、乳製品に含まれる乳酸球菌の中では、唯一生きて大腸まで届くことが明らかにされたプロバイオティクス乳酸菌です。
これは、「カスピ海ヨーグルト」の摂取試験において、ヨーグルトを食べている時期はもちろん、ヨーグルトを食べるのをやめた2週間後でもFC株が検出される方がいたという研究結果をもとにしています。
日本の人々にもこのヨーグルトの健やかさを届けたいという家森幸男教授の強い想いに賛同したフジッコ株式会社により、このヨーグルトから「クレモリス菌FC株」が分離・純粋培養されて作られた「カスピ海ヨーグルト」の種菌が頒布され、日本に広まったのです。
現在までに、「カスピ海ヨーグルト」についての様々な研究が行われ、コーカサス地方の長寿の秘密が明らかにされてきています。
カスピ海ヨーグルトの効果について
クレモリス菌やその産生物であるEPSは、フジッコやグリコなどのメーカーや各機関で積極的に研究されており、様々な可能性を秘めています。
具体的にはどのような効果を期待できるのかを紹介したいと思います。
コレステロールの減少(マウスのデータ)
マウスのいデータですが、クレモリス菌が中性ステロールや総胆汁酸の体外の排出を促進させ、その結果、血清コレステロール濃度が低下することが確認されています。
便秘改善(ヒトのデータ)
クレモリス菌は他の乳酸菌より効果があるという報告がされています。
クレモリス菌入りのヨーグルトを2週間程度食べると排便の回数も便の量も増える人が多いそうです。
カスピ海ヨーグルトを摂取すると、排便量、排便回数、排便日数が増え、便の形状や色、排便後のスッキリ感が改善されました。また、糞便中のビフィズス菌の割合が増え、アンモニア量が減ることがわかりました。
食後の血糖値上昇抑制(マウスのデータ)
食事とEPSを一緒に摂取すると、EPSが食物繊維のように小腸での糖質の吸収を抑制することで、血糖値の上昇が緩やかになることがわかっています。
ブドウ糖だけを投与したマウスに比べて、牛乳を一緒に投与したマウスでは血糖値の上昇が少し抑えられました。これに対して、カスピ海ヨーグルトを一緒に投与したマウスは、さらに血糖値の上昇が緩やかになることがわかりました。
アトピー性皮膚炎(アトピー性皮膚炎モデルマウスのデータ)
EPSやクレモリス菌が産生するその他の菌体成分が、アトピーの特徴である皮膚の肥厚化やアレルギーの指標となるIgEの上昇が抑制されることがわかっています。
カスピ海ヨーグルトを摂取させると、薬剤を塗ることで生じる皮膚の炎症や肥厚化、水分量の低下が抑えられるなど、アトピー性皮膚炎の症状が緩和されることがわかりました。
一方、その他の乳酸菌で発酵させたヨーグルトを摂取させても、そのような効果は認められませんでした。
免疫細胞の活性化(マウス細胞のデータ)
EPSが免疫細胞を刺激して、サイトカイン(生理活性物質)の生成を誘導する作用があることがわかっています。
マウスでの実験データが多く、研究の余地がありますが、カスピ海ヨーグルトは 人に対しても高い効果が十分に期待できます。
カスピ海ヨーグルトの作り方
通常の乳酸菌とは異なってカスピ海ヨーグルトの乳酸菌は20℃から30℃という低い温度で増えるため、特殊な器具などを使わずに、牛乳から手軽に作りやすく、ご家庭でも簡単に作ることができます。
「カスピ海ヨーグルト手づくり用種菌」を使用した場合の作り方
準備する材料
・牛乳500ml(種類別 牛乳表示があり未開封の新鮮なもの)
・ヨーグルトをつくる容器(容器500ml以上で熱湯消毒に耐えるフタつきのもの)
・スプーン
・粉末種菌 1包
・熱湯消毒したスプーン
①熱湯消毒した容器に牛乳を約半分(250ml)入れます。
②粉末種菌(1包)を加え、熱湯消毒したスプーンでよく混ぜます。
③残り半分の牛乳を入れて、混ぜます。
④しっかりフタをして常温(適温27℃)で発酵させます。
牛乳が固まれば出来上がりです。
発酵時間の目安ですが、夏は12時間~48時間、冬は24時間~72時間です。
固まるまでの時間は季節によって変化します。気温が高いと早く固まり、気温が低いと時間がかかります。
カスピ海ヨーグルトの上手な植え継ぎ方
次回カスピ海ヨーグルトを作るときのための、「種菌」となる「種ヨーグルト」は出来上がった直後のヨーグルトからとりだしましょう。
1.できあがった直後のヨーグルトの真ん中あたりを、熱湯消毒したスプーンですくい取り、熱湯消毒した別の容器に移します。
2.室温(25℃前後)にもどした牛乳を入れて混ぜます。
このとき、ヨーグルトと牛乳は1:10の割合で混ぜてください。
※牛乳500mlであればヨーグルトは大さじ3杯程度
※種ヨーグルトの量が3割以上になると、ヨーグルトがきちんと固まりません。
3.フタをして室温(温度27℃)で6~24時間発酵させて固まればできあがりです!
「カスピ海ヨーグルト」は出来上がったヨーグルトを種にして、植え継ぎができる点が大きな特徴ですが、真っ白でとろりとした粘りや酸味の少なさは、元気で新鮮な菌ならではのものです。
気をつけていても菌は弱りますので、安全に美味しく食べるために種菌の交換は欠かせません。
種菌は1ヶ月毎、最低でも季節毎に新しくしましょう!
植え継いでいくと種菌は弱ってきますのでおいしく健康的に続ける為に種菌は定期的に新しく取り替えましょう!
カスピ海ヨーグルトを衛生的に作るためには注意が必要です!しっかり守って作りましょう。
・ヨーグルトを作るときや種ヨーグルトを保存するときに使う容器やスプーンは、使用前に必ず熱湯で消毒する。消毒したら、牛乳やヨーグルトが直接触れる部分には手で触らない。
・牛乳は、日付の新しいものを用意し、使用する直前に開封する。
・発酵中はフタをする。
・発酵温度は、20℃~30℃になるようにする。暑い季節は冷房のある部屋で、寒い季節は暖房のきいた部屋で 発酵させてください。
・ヨーグルトは、固まったら、冷蔵庫で保存する。
・種にするヨーグルトは、できたての新鮮なヨーグルトから取る。すぐに使わない場合は冷蔵庫に保存し、 1週間以内に使うようにする。
・ヨーグルトの味・におい・色・固まり方などに異常があった場合は、食べずに処分する。
カスピ海ヨーグルトを植え継いで作るときに絶対にしてはいけないこと!
①ティッシュでフタをしない!
ティッシュペーパーは目が粗いので、空気中の雑菌は素通りします。
キッチンペーパーやふきんでも同じです。きちんとしたフタを使ってください。
「カスピ海ヨーグルト」に含まれる2種類の菌のうち、アセトバクター菌は酸素を必要としますが、空気がなくても問題ありません。また、もう1種類のクレモリス菌は、酸素を必要としません。
容器の中に入れた牛乳の表面とふたの間に2cm以上の空間があればフタをきっちり閉めても発酵します。必ずフタをしてください。
②食べ残りのヨーグルトに牛乳を足して新しい作らない!
フタの開け閉めや、スプーンの出し入れで、雑菌は混入します。種菌となるヨーグルトは、必ず食べる前に、別にとっておいてください。
上記のことを守り、衛生的にカスピ海ヨーグルトを作りましょう。
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